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大阪View:夢紡ぐ歌声響く ストリートミュージシャン・大阪出身の門谷さん、東北の避難所でも /大阪

 大阪の街にはストリートミュージシャンがあふれている。メジャーデビューを果たした人も多く、夢を紡ぐかのように音楽が響き渡っている。

 大阪市北区。アコースティックギターの旋律に乗って、澄んだ伸びやかで力強い歌声が聞こえてきた。通行人たちも足を止め、人だかりになった。

 「100万人に届いたあのラブソングが、今、東北のあの少女には届かない。何を歌えばいいのかわからなくなったから、私は今、この歌を歌おう」

 門谷純さん(27)。各地で路上ライブを行っているが、出身地の大阪で歌うことが多いという。この一節は、オリジナル曲の冒頭に組み込んだ弾き語りだ。

 昨年3月11日、東京・有楽町で歌おうとしていた時、東日本大震災が起きた。

 すぐに、ライブで知り合った人のつてを頼り、宮城県気仙沼市、石巻市、仙台市でボランティア。その後、新宿、名古屋、大阪で仲間とともにチャリティーライブを開き、避難所でも歌った。

 だが当初、避難所で何もできない無力感ばかりが募った。石巻では、恋人の遺体を淡々と捜し続ける女性と知り合った。弾き語りにしてみたが、曲として成り立たせることはできなかった。

 門谷さんには、以前からの夢がある。武道館ライブだ。

 避難所で歌った後日、「家族も家もなくして門谷さんの夢を聞いた。今は夢に向かおうと思う。武道館に必ず行く」と12歳の少女から手紙が届いた。「来てくれてありがとう。宝物にするからね」。中高年の女性に手を握られた。

 「自分の夢を見てもらうこと、かなえること。それがあの方たちの希望にもなる」。避難所で知り合った人を武道感に招待するのだという。そのためにも路上で歌い続ける。【三村政司】

毎日新聞 2012年3月11日 地方版

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